2016年6月3日金曜日

数学の学び方〜ゲームバランス崩壊の例〜

前回につづき、またまた数学の学び方シリーズ。

前回は「MMとゲームバランス」と題して書いたのだが、要約するとだいたい以下のような感じ。MM(ドラクエに例えればレベルや経験値)を効率よく上げるためには、各人のMMに応じた数学を学んで行く必要がある。で、ドラクエでは、ゲームを進めながらレベルも上がって行き、それに合わせて出現する敵も強くなるように、基本的には「ゲームバランス」が保たれているため、この辺はあまり気にする必要もないのである。

そして、数学の勉強においても、例えば中学や高校ぐらいまでは(私の意見では)この「数学のゲームバランス」がきちんと考慮されてカリキュラムが作られているため、とくに心配する必要も無いように思える。

とりわけ、高校までのカリキュラムは(日米問わず)学校教育の長い歴史を通して少しずつ修正されながら作り上がったものであるため「大きくゲームバランスが崩れる」ということは無いように思われる。(もちろん、細かい問題点を取り上げたらいくらでもあるのかもしれないが。)

ところが、数学の勉強をさらに先に進めて行くと残念ならが「ゲームバランスの崩壊」にぶち当たってしまうこともあるのだ。そう、ドラクエⅡのロンダルキアへの洞窟のように。(って、前回同様、またリンク張っちまったけど、ドラクエⅡをプレイしたことが無い人はこの際、是非やってみてください。)


おそらく、日本において数学を学んで行く上で一番最初に出くわす「ゲームバランス崩壊」の顕著な例は、いわるゆ「イプシロン-デルタ論法」であるように思われる。

これは、高校の微分積分で習う「極限」の概念を厳密に定義する論法のことでり、日本の大学で(いわゆる)理系に進んだ場合、学部や学科に関係なく、通常、大学一年の微積の授業の最初の方で習うことになる。

そして、多くの理科系の大学一年生はここで、とんでもない苦労を強いられることになる。中には、これが原因で(高校までは数学が好きだったのに)数学が嫌いになってしまう人や、さらには「大学の数学ってこんなに難しいのかぁ〜」と心を折られてしまい、その後4年間の大学生活全体にまで影響を及ぼしてしまったりもする、理科系大学生には実に悪名高いものでもあるのだ。

そう聞くと、とんでもなく難関なものに感じるかもしれないが、実は「イプシロン-デルタ論法」が「難しい」というよりは、この時点で「ゲームバランスが崩壊してしまってる」というのが実情のように思える。

この「イプシロン-デルタ」を理解するには、じつはそれほど多くの「知識」は必要とせず、極端な話、高校の微積の一番始めに「極限」の概念を習ったその直後にでも理解が可能なのである。そう、「知識」という点においては。

ところが、この「イプシロン-デルタ」を理解するのに必要なMMは、高校の微積を理解するよりも遥かに高いものであり、多くの人にとって大学に入学した時点でのMMはイプシロン-デルタを理解できるほど高くは無いのである。

まさに「ドラクエⅡのロンダルキア状態」と言えるであろう。

私の考えでは、日本の高校レベルの微積(一変数関数の微積)を学んだあと、最低でも半年、出来れば1年から1年半ぐらい、その後に続く「多変数関数の微積」、「線形代数の基礎」、そして「基礎的な集合論」を勉強したぐらいで到達するMMぐらいが、イプシロン-デルタに挑むのにちょうど良いぐらいに思える。

ちなみにアメリカの場合は、一変数関数の微積のすぐ後でイプシロン-デルタが教えられるということは通常行われず、まさに上に書いたような分野を学んだ後に、イプシロン-デルタが教えられるため、日本のようにイプシロン-デルタが悪名高いものになっていないように思える。つまり、少なくともこの点に関してだけ言えばアメリカの方が大学のカリキュラムにおける「ゲームバランス」が良いと言えるように思える。


では、このような「ゲームバランスの崩壊」に直面したとはどうすれよいのか?次回はこの辺について書いてみようと思う。



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