2010年12月7日火曜日

日米大学比較~授業履修システム

前回、日本とアメリカの大きな違いとして、アメリカでは専攻分野を変更する事が可能である点を挙げたが、これから数回に渡り、このことに関してもう少し具体的に書いていこうを思う。


今回は授業履修に関して。


日本の場合

日本の大学において、どの学生がどの授業を履修できるかを決定するのは所属学科と学年である。

基本的に××学部××学科×年生用の授業といいったある種の「枠」があり、その中で履修する授業を選ぶシステムになっている。

つまり「学科」とうい横方向の枠と、「学年」という縦方向の枠。この二つの枠の中で、かなり不自由な授業履修をしなければならないのだ。

もちろん、各大学や同じ大学でも各学部学科によって、この「枠」の自由度というものがある程度は存在するのではあるが。

例えば、××学部の全学科共通科目のようなものもあったり、1、2年生共通科目とか3、4年共通科目、みたいなものもあったりするのだが、どの授業の履修が許されるかは所属学科と学年によって決定されるという点に変わりはないのだ。


そして、いわゆる日本の文科系の場合の方がこのような自由度が大きいような感じである。そして、最もこの自由度が無いのが医学部と工学部である。

そして、この「(ある程度の自由度はある)枠」を越えたところでの授業履修はまず不可能である。いわゆる「他学科履修」みたいのが可能な場合もあるのだが、かなり限定的であり、「学科」よりもさらに大きな区分である「学部」を越えた範囲での履修となるとさらに難しくなる。

例えば、英文学科の学生が数学科の授業を履修することなど100%不可能と思える。

そう、日本の大学では専門分野を変更する事が不可能なだけでなく、他分野の授業を履修することすら不可能に近いのだ。

そして、年度初め(つまり四月の初め)にその年の履修届けを出す形になる。



アメリカの場合

アメリカの大学において、誰がどの授業の履修を許されるかは、学年や各学生の学科(専攻分野)とほぼ関係のない「prerequisite制」とでも呼ばれるシステムになっている。

それを説明するために、まずアメリカの大学では、各授業にはcourse number(授業番号)と呼ばれるものが付けられている。例えば私が来学期教える授業の一つは線形代数の二学期目の授業なのだが

MA 353  Linear Algebra II with applications

みたいな感じある。初めのMAはmathの略で要するに数学という意味。そして、その後の353というのがその授業のレベルを表す。番号の振り方は大学によって結構異なるのだが、基本的には番号が大きければレベルの高い授業と言う意味になる。

Purdue大学では0~200番代の番号が振られた授業がいわゆる基礎科目のようなもので、300~400番代が学部レベルの専門科目。500~600番代が大学院レベルの授業になっている。

もちろん、数学以外でも同様で、例えば哲学科の近代哲学史の授業は

PHIL 303  History of Modern Philosophy

みたいな感じである。もちろん、PHILはPhilosophyの略。



で、各授業にはその授業を履修できるための必要条件とでも呼べるようなものがある。これがprerequisiteと呼ばれているものである。

例えば、上に挙げたMA 353のprerequisiteは

MA 265 with grade C- or better, or MA 351 with grade C- or better

とある。つまり、MA 265かMA 351(どちらも線形代数の最初の授業)でCマイナスかそれよりも良い成績を取っていること、という意味。

そして、MA 265とMA 351には、さらにそれぞれにprerequisiteが決められている。


また、PHIL 303のprerequisiteはなんと


prerequisite無し!!


である。


そして、基本的にこのprerequisiteさえ満たせば(学費さえ払えば)各学生の専攻分野や学年などには一切関係なく誰でも履修出来てしまうのである。もちろん理系・文系なんていう分類も存在しないのだ。


つまり、MA 353であればMA 265かMA 351でC-以上の成績を取っていれば、それだけで履修できる事になり、さらにPHIL 303はprerequisiteが無いためpurdueの学生であれば誰でも履修出来てしまうのだ。


基本的にこのprerequisiteというのは学生がその授業についていけるかどうかを決定するためのものであり、例えばMA 353の授業内容はMA 265かMA 351でカバーされる内容をベースとするものになるので、この二つのどちらかで最低限の成績を取っているいる事が要求されており、哲学のような学問は数学とは異なりあまり「積み重ね」が要求されず、例えばPHIL 303は特に別の授業の内容をベースにする訳でもないので、prerequisiteが無いのである。



そして、アメリカの大学では毎学期履修届けを提出するシステムになっている。そう、毎学期、自分の取りたい授業や取らなければいけない授業をprerequisiteを満たす授業の中から履修する感じになる。


とにかく、こんな感じで日本とは比較にならないほどに自由に好きな授業を履修できるのだ。


でも、そんなシステムで「人気の分野に学生が集中しすぎたりしないのか?」と思う人もいると思うのだが、この辺の事はまた別の機会にでも書こうと思うのだが、意外とその辺は問題にならずに上手く回っている、というのがとりあえずの結論である




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2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

古い記事へコメントをしてしまいますが、申し訳ありません。

>「人気の分野に学生が集中しすぎたりしないのか?」と思う人もいると思うのだが、この辺の事はまた別の機会にでも書こうと思うのだが、意外とその辺は問題にならずに上手く回っている

これを是非なぜなのか教えていただきたいです。

数年前に聞いた話ですが、東大が後期入試で「科類ごとの入試試験」ではなく「合格した後に科類を決める」という方式を取ったことがありました。その結果、理科を選んだ学生が、文科を選ぶ学生の倍程度と差がつき、また文科は文Ⅰに8割近くの学生が集まったということがあったそうです。

東大では一部の分野に偏ってしまったのに、アメリカではそうでないというのは、非常に興味深いです。

謎の数学者 さんのコメント...

匿名さん。コメントありがとうございます。

記事にも書いたようにこの事はそのうち詳しく書こうと思っているのですが、やはりアメリカでも分野によって人気不人気の差はでます。

ただ、過去のデータなどから、だいたいどの授業にどのぐらいの学生が集まるかというようなことが各学科ともにある程度把握できているために、それにあわせて、教員や授業数を前もって設定できるために「問題にならずに上手く回っている」といった感じです。