ちょっとだけ久しぶり(?)に日米大学比較。今回は専攻分野選びについて。
このことは、私が思う(アメリカの大学と比べて)日本の大学の最大の欠点というか欠陥でもある。そのため、ある程度の回数に分けて書こうと思うのだが、今回はとりあえず大まかな点を書くことにする。
日本の場合
日本の大学では(一部の例外的な大学を除いて)基本的に専門分野は大学入試の時に決めるもの。多くの場合は、希望の学部と学科を願書提出の際に決める必要がある。そして、大学入試自体が学部ごと(大学によっては学部だけでなく学科ごと)に入学試験が異なっている場合もある。
基本的に大学を受験するというよりは、希望の学科を受験する、といった感じになる。
そして最も重要なのは、基本的に入学後は専攻分野を変更できない、という点である。
日本での感覚では「そんなの当たり前じゃん」と思うかもしれないが、この事を(日本の事情を知らない)アメリカ人に話すと、とんでもなく驚かれる。
何故かと言えば、
アメリカの場合
アメリカの大学では基本的に専攻分野を出願時には決める必要がないのである。別に決めても構わないが、通常は大学に入学してから専攻分野を決めれば良いのである。
そう、大学に入学していくつか、色々な分野の授業を履修しながら、自分の好きな分野を専攻分野(major)として選ぶようなシステムになっている。
さらに、一度専門分野を決めた後も「やっぱ他の分野がいいかなぁ~」と感じたら、分野を変更することも全然オッケー。
例えば以前、私がUPennにいた時、学部(Undergraduate)のAdmission Office(入学審査科って訳すの?)の人の話を聞く機会があったのだが、UPennに入学してくる学生の訳半数は入学時には専攻分野は決まっておらず、残りの半数の多くも結局は入学後に別の分野に専攻を変える、とのこと。
そう、結局ほとんどの学生が、何がやりたいか分からずに大学に入学するのだ。
そして、それで良いのである!!
基本的な発想として、
「まずやりたい事を決める」
のではなく
「色々な事をやりながら、徐々に自分の専門を絞っていく」
というのがアメリカ流なのだ。
でも、日本でも結局ほとんどの学生が大学で何が学べるのか分からずに大学に入ってくるように私には思える。アメリカとの違いは、日本の場合、出願する時に専門を決める必要があり、入学後はそれを変更することもまともに出来ないとこにある。
これこそがアメリカと比べた時の日本の大学の最大のdownsideと思っている。
日本人は良く、
「まず初めにやりたい事を決めて、目的を持ち、ベクトルを定める。そうでなければ駄目だ!」
みたいな事を言いますが、個人的にはこのような根拠のない「日本人的精神論」のようなものが現在の不自由な制度を作ってしまっているようにも思える。
アメリカでは、人生のベクトルは、その時の状況や個人の興味関心の変化に応じて、段階を追って徐々に定めて行くものなのである。
このような発想の違いは実は学部だけでなく、大学院にも言えるように思える。もちろん大学院はアメリカでも初めに分野を決める必要がある。数学なら数学科に出願しなければならない。でも「数学の中で、どの分野?」という話になると、別にそこまで細かく決める必要は全くなく、大学院に入ってから、数学の中でも色々な分野の授業を履修して、段階を追って数学のどの分野に進むかを決めるものなのである。
例えば私は現在、保型表現論という分野を専門にしているのだが、UPennの大学院に進んだ時にはそんな分野が存在する事すら知らなかったほどである。でも、それで良いのである。
結局、私が思うに、重要なのは
「まず、何がやりたいか」
ではなく
「色々な事をやりながら、何をやりたいかを決めていく」
という姿勢で、アメリカの大学(院)の制度はそのような発想に適したシステムになっているのだ。
でも、日本人留学生の中にもこの違いがいまいち分かっていない人とかいたりして、相変わらず上に上げたような日本人的精神論で行動してしまう人とかもいたりするのだが、そんな日本人を見かけたりすると、せっかくアメリカのflexibleなシステムがあるのに、それを生かそうとしていないのは、もったいないなぁ~、とも思ったりする。
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5 件のコメント:
はじめまして。日本で物理学を専攻している学部2年のものです。いつも役に立つ記事をありがとうございます。
私も、大学に入ってから物理よりも数学に興味が移り、出来れば大学院では数学を専攻したいと思っています。
友人にそのような話をしたところ、それなら日本の大学院ではなく、アメリカの大学院を目指した方がいいのではないか、と言われたことがあったのですが、このブログででようやくその理由がわかりました。
そこで少しお聞きしたいのですが、アメリカの大学院で数学を専攻するにはどのくらいの知識が前提なのでしょうか?
また、私はかなり英語が苦手なのですが、英語はどのくらいのレベルが必要でしょうか?
お手数ですがよろしくお願いします。
akさん、コメントありがとうございます。
大学院のレベルにもよりますが、最低限、代数と解析の基本的な授業を一年分ぐらいは履修している必要はあります。akさんの大学でもし他学科履修が可能であれば、最低このぐらいの授業を履修する事は不可欠だと思います。
また、英語に関してですが、数学の場合、ただ数学を学ぶためだけならば、英語力はそれほど必要でもないかもしれません。
ですが、基本的に数学の場合、TAをやることにより財政援助が得られます。つまり、英語で数学を教えられる必要があるので、実は、英語力は不可欠です。まだ2年ということで時間は十分にあると思うので、英語力にも磨きをかけてみてください。
自分もアメリカの大学の利点は専攻を比較的簡単に変えることができることだと思ってます。
人によっては二つの専攻を同時(多重専攻?)に取ってる人だっていますし、副専攻(minor)などはかなりの生徒がやってると思います。学部生の時の専攻と違ったことを大学院で勉強している生徒も結構いると思います。アメリカの大学はすごくflexibleですよね。
この場を通じて自分もakさんにコメントを書かせていただきます。
自分はアメリカの大学院で数学を勉強しているんですが、実は学部時代の専攻は航空宇宙工学なのです。
学部時代に数学の方に興味が向いて、専攻のクラスに加えて数学のクラスを取ったり自習などしたりで、自分で数学力をあげました。謎の数学者さんがおっしゃる通り、代数と解析は勉強しといたほうがいいと思います。一番自分が難しく感じるクラスは解析で、学部時代にもっと数学的思考を担っとけばよかったと後悔しています。あと、証明のやり方や、証明に使われる英語をちゃんとわかってたほうがいいですよ。
TAに関することも、全く持って謎の数学者さんのコメントに同意します。現在、TAをやっててるんですが、三十人程度(場合によりますが)のアメリカ人学生の前に立って数学を教えなければならないので、英語力は不可欠だと思います。
皆さんありがとうございました。
解析と代数は数学科の講義に潜ったり、自分で本を買って勉強したりしているので、大学を出るまでに学部2~3年程度の知識は得られるだろうと思います。
英語の必要性がよくわかったので、これから頑張ろうと思います。
本当にどうもありがとうございました。
ちょくちょくブログを拝見させていただいております。
本当あれもやりたいこれもやりたいって迷ってる学生にとっては羨ましい制度です!
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