2010年2月1日月曜日

数学者への道


以前、数学者はアメリカでナンバー1の職業にランクされた(参照記事)って書いたことがある。

そう、数学者ってかなり美味しい職業なのだ!!

といっても、誰でも簡単に数学者になれる訳ではない.....当たり前だが。

そこで、今日は「数学者になるには?」をテーマに、アメリカで一般的な数学者がたどる道のりと、私の場合どうだったか、について書いてみたいと思う。

ただ、初めに断わっておくと、これはあくまでもアメリカでの話であって、他の国のことは全く考慮に入れていないので、ご了承くださいませ。


第1ラウンド:大学(学部)を卒業する。

当たり前である。が、意外と当たり前でないのは、別に数学を専攻する必要も無いということ。これは日本だと難しいかもしれないが、アメリカの場合、制度上かなり可能。

実際、Shahidiは学部時代は機械工学を専攻していたし、フィールズ賞のWittenはなんと学部時代は歴史学を専攻。ちなみに、私も学部時代は機械工学科だった。

基本的にこのラウンドが終わるころは22歳前後が普通。



第1ラウンドと第2ラウンドの間の休憩(?)時間:学部卒業から大学院に進学するまで。

人によっては、学部を卒業してから、数年間ぐらい、仕事したり、台湾や韓国みたいな国だったら、男は徴兵されたり、まぁ、人それぞれなんらかの期間がある。意外と学部出てすぐ大学院に行くパターンってむしろそんなに多く無い気もする。

私の知っている人で、学部出て、子供一人育ててから大学院に戻って来た人もいるぐらい。

別に急いで大学院に行く必要もなく、2、3年大学から離れて、また大学に戻ってくる、って意外とよくあるパターン。(もちろん、これはアメリカでの話だけど。)

あと、私の出た大学院(Upenn)の教授の一人で、数学の大学院に進む前にmedical schoolに一年通ったけど、つまらなくなって、辞めて数学に移ってきたって人がいる。

ちなみに私も場合、日本の学部出て、すぐにアメリカの大学院に来たけど、初めは数学を専攻してなかったから、このパターンに当てはまると思う。

これが終わるころには22歳から26歳ぐらいになっていると思う。



第2ラウンド:大学院でPh.D(博士号)を修得する

これも、まぁ、当たり前って言えば当たり前。基本的には数学でPh.Dを取る。

だが、中には数学以外の分野、例えば物理とか経済学とかコンピューターサイエンスとか最近では生物学とか、数学とかなり近いような分野で数学よりの研究をやっていた人が、数学者になる例もある。もちろん例外的だと思うけど。

ちなみに、アメリカの大学院は数学の場合Ph.Dプログラムであれば、TA(Teaching Assistant)をして、基本的に学費は全額免除でなおかつ、月15~20万円ぐらいの給料ももらえるのが普通。いくらもらえるかは大学院によってまちまちなのだが、基本的に

「お金をもらって学生をやれる!!」

ということになる。普通の日本人の感覚なら「なんだ、そりゃ?」って思うかも知れないのが、それは日本人の「学生」というものに対する、偏見が生み出す言葉に過ぎないのである。

前にもっちょっと書いたけど(参照記事)、アメリカの大学院でPh.Dを取るのは、これがそう簡単ではないのだ!!

私が思うに、数学者がナンバー1の職業なら、(数学を専攻する)アメリカの大学院生がワースト1の職業ではないか?と思うほどに、数学者としての厳しい修行の日々を送ることになるのだ。

具体的な事はまた別の機会にでも書くとして、とにかく私が自信を持って言えること、それは

「今の倍の給料もらったって、もう絶対、大学院には戻りたいとは思わない!!」

特に私は、数学の中でも、専門分野の変更があったり、指導教官に恵まれなかったりで、Ph.D取るまでは大変だったのだ。

そして、この厳しい第2ラウンドもPh.Dの修得と共に終了のゴングがなる。

この時点で年齢的には、かなりばらつきが出るが、まぁ、27から32歳ぐらいだと思う。個人的には27歳未満でPh.Dを取れたら、結構早い方だと思う。

でも、歴史的に名を残すような数学者でも、かなりPh.Dを取るのが遅かったって人もいるから、ただ早けりゃいいってものでもないとは思う。

ちなみに、私の場合、数学にたどり着くまで、色々回り道があったから、Ph.Dを取った時は31歳だった。


第3ラウンド:ポスドク

Ph.Dを取ったら、多くの場合1年から5年ぐらいの間、通常「ポスドク」と呼ばれている身分となる。ポスドクとはpost doctorの略。基本的に、1年から3年ぐらいの期間限定の契約で大学に雇われることになる。

主な任務は教育と研究。アメリカの場合、研究だけっていうポスドクのポジションはまれで、ほとんどが授業を担当することになる。

まぁ、Ph.Dが「免許書」だとしたら、ポスドクは「初心者マークの期間」といった感じだろうか。

ちなみに私の場合は、一番最初がUCSD(カリフォルニア大学サンディエゴ校)で一年間のポジション。そう、たった一年間。

そして、その次は、アメリカから離れ、イスラエルで一年間のポスドク。そう、またまた、たった一年。

そして、そのあとは今いるPurdueで3年契約のポスドクで、今はその2年目。

ちなみに、基本的に英語でもpostdoc(ポスドク)って言うけど、正式にはアメリカの場合ポジション名がpostdocとなることはあまりなく、例えば私の現在のポジションは正式名称をVisiting Assistant Professorなどといって、それっぽい名前が付いている。

アメリカでは多くの場合、ポスドクはpostdocではなく、○○○ Assistant Professorみたいに、そこそこかっこいい(?)名称が付いているのが普通。

このラウンドが終了するときには、30~38歳、場合によっては40を越える、ぐらいになってるのが普通だと思う。


第4ラウンド:Tenure Track のAssistant Professor

さて、そんな「初心者マーク期間」であるポスドクをやりながら、なんとか研究成果を上げ、教育の経験を積み、次の段階がこれ。

基本的に期限無しのポジション。その最初がAssistant Professorってやつ。そして、多くの場合Tenure Trackと呼ばれている段階に入る。

分かりやすく言えば、教授になる人にとっての試用期間みたいなもので、大学側が「こいつに一生大学にいてもらっても大丈夫か?」を判断する期間。

この間、もちろん研究成果を上げ、論文を書き、授業を行いそこそこの評価を得る、といったような事が要求される。

人にもよるが、この間が3から5年ぐらいだと思う。

もう、この辺になると、年齢はかなり個人差が出てくると思うが、多分、このラウンドが終わるころには早くて35歳ぐらいで遅ければ40過ぎになると思う。

第5ラウンド:Associate Professor

そして、見事「試用期間」を突破すると、Tenureをもらえる。Tenureというのは基本的に「首にならない」という意味。

つまり、一度Tenureになってしまえば、論文を一本も書かなくっても、授業がへぼ過ぎて、学生から苦情が沢山出ても、首にはならないのだ!!

このあたりに来ると、数学者として「生き残った」といえると思う。

そして、この段階になるとAssociate Professorと呼ばれるようになる。

この段階では年齢的には40過ぎの人も多くなると思う。多分40前に次の段階に進めたら、数学者として、出世の早い方だと思う。

もちろん、Tenureになってしまったら、首にならない訳だから、研究を完全に止めてしまって、リタイヤするまでず~っとAssociate Professorの人もいる。(Upennにも一人いた。ここだけの話。)


第6ラウンド: Professor

Associate Professorから、さらに年月が経ち、研究実績などによって、Professorへと進化できる。そう、まさにこの段階にたどり着いた人が「教授(Professor)」。

ちなみに、私の生徒の多くは私のことを"Professor"と呼んでくれたりもするが、そのたびにいつも、いや、私はまだProfessorじゃないよ、って思ったりもする。

あと、AssistantでもAssociateでもない、完全な(?)Professorってのを強調するために、Full Professorという言葉を使う時もある。

個人的には、そこそこ名のある大学(たとえばPurdueとか)で、Professorと呼ばれる人たちが一人前の「数学者」のような気がする。


第7ラウンド:さらにその上

そう、アメリカでは(基本的にそこそこ名のある大学だけなのだが)さらにその上がある。これをChair Professorとかって言ったりするのだが、その分野でものすごく大きな実績を上げた人にはなにやら、それっぽい「称号」みたいのが与えられる。

例えば、Purdueだったら、

Shreeram Abhyankar..........Marshall distinguished professor

Louis de Branges................Edward C. Elliott distinguished professor

Freydoon Shahidi...............Distinguished professor

ってな感じで、明らかに「この人、ただの教授じゃないな」って思うような呼び名になる。

ちなみに、私のPh.Dの指導教官だった教授にも、最近なにやらそれっぽい称号が付いた。(といっても、この教授は私にとっては「書類上」の指導教官に過ぎないのだが、そのことはまた別の機会にでも書くことにする。)

もう、この辺は、数学界の頂点に君臨するよな人達だけが到達できる身分。

あと、これは日本でよく聞く「名誉教授」といったものとはまた異なる類のものですのでご注意を。



と、まぁ、こんな感じで、「数学者の道」は果てしなく長く険しい。

言うまでもなく、ラウンドが上がるごとに、少しずつ淘汰され、フルイにかけられ、最後までたどり着くのはほんの一握りにすぎないのである。


例えば、私がPh.Dを取ったUpennに私と同じ年±2年以内に大学院に入った人達の中で、そこそこ名のあるいわゆる研究系の大学(Research University)で、現在第4ラウンドのTenure TrackのAsssistant Professorまでたどり着いた人はなんと、たった


3人................


Upennでは毎年15人ぐらい大学院生が入ってくるから、それを考えると、いかにに「数学者の道」が競争の激しい道であるかが分かる。


さて、私は第3ラウンドを格闘中の身なのだが、果して私は第何ラウンドまで生き残れるのか、このブログを読んでる人達、予想してみてはいかがでしょうか?



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32 件のコメント:

Unknown さんのコメント...

こんにちは。すみれです。UCSD で、Post Doctor を、なされていたのですね。

謎の数学者 さんのコメント...

はい、していました。といっても、UCSDでのポジションはTeaching Visitorなどという、何やらあいまいなポジションではありましたが。

Unknown さんのコメント...

はじめまして、ぜひ全てのラウンドをクリアしてください。応援しています。

ところでアメリカでは数学のPhD持ちの方は民間企業で引く手あまたと聞きますが、このへんの事情はどうなのでしょうか。例えばポスドク数年やって無理でも最悪民間で働ける。という感じです。
日本だとどうしても大学教員orDieみたいなところがありますよね。

謎の数学者 さんのコメント...

takuyaさん、コメントありがとうございます。

確かにアメリカでは数学でもPh.Dの後に民間企業に就職する例が結構あります。これについても、そのうちブログで書きたいと思うのですが、やはり日本との大きな差だと思います。

Unknown さんのコメント...

お返事ありがとうございます。
記事を楽しみにしております。

Yoshi さんのコメント...

とても興味深く読み読ました。テニュアまで、長く厳しい道程ですねえ。でも、最終的にResearch university所属にならなくても、結構立派な業績の人もいますよね。知人の先生のお話では、teaching universityのほうが、業績の要求はあまり強くないので、好む人もいるとのことでした。

ところで、アメリカのテニュアって、どの程度安全なんでしょうか。例えば学部が廃止とか縮小されたらどうなるのでしょうか。州予算が大きく減らされたり、私立の小さいカレッジなど、経営が傾くこともあると思うのですが・・・。

イギリスでは今政府予算の縮小で、各大学は非情なるリストラに迫られています。イギリスでは珍しいProfessor職の、著名教授でも首になりそうなケースもあるようです。また、上から解雇を言い渡されなくても、学部の予算が減ったりして、研究業績の少ない先生が、辞職するように圧力をかけられるケースも聞きしました。

謎の数学者 さんのコメント...

Yoshiさん、コメントありがとうございます。

アメリカではあまり、学部の廃止ということは聞いたことがありません。特に数学の場合は教育機関としての要でもあるため、その辺の心配はあまり無いようです。

Unknown さんのコメント...

かなり前の記事にコメントしてすみません。
はじめまして、私は今日本の大学院に所属しているM1で、数学ではない分野を専攻しているのですが、漠然と数学の研究をしてみたいと思っています。そして願わくばアメリカに行きたい、という願望があります。
そこで質問があるのですが、管理人さんはなぜ数学に鞍替えしたのですか?
また現時点で研究対象がはっきりしていないと難しいでしょうか?
もしよろしければお教えいただけるとありがたいです。

謎の数学者 さんのコメント...

ki h さん。
私が数学に転向した理由はかなり長くなるので、ここでは割愛させていただきます。

アメリカの大学院への入学に関してですが、現在の専門分野は数学とはどのぐらい離れているのでしょうか?

また、研究テーマや指導教官などは大学院に入学後2年間ぐらいの間に徐々に決めていけば良いのでその辺は特に心配する必要はないと思います。

Unknown さんのコメント...

お忙しいところお返事いただき、ありがとうございます。
学部時代は化学を専攻しておりましたが、現在の専門分野は生物よりなので、あまり数学には近くないですね…。

研究テーマや指導教官は徐々に決めていければいいのですね、少し安心しました。

法学部卒 さんのコメント...

はじめまして。いつもブログ拝見しています。
突然で恐れ入りますが、米国大学院数学科への留学について質問があり、お答えいただけましたらありがたく存じます。

留学するためには推薦状が重要だと聞いたのですが、実際、どのような内容の推薦状を書いてもらうことが必要なのでしょうか。
例えば、数学科の学部の授業(専門科目)を履修し、「この学生は私の授業でAの成績を修めた」などと書いてもらえれば十分でしょうか。
それとも、「この学生は私のゼミ研究のアイデアを発表したが、その内容が素晴らしかった」というように、研究者としての見込みに言及したものでなければいけないでしょうか。

Stnktshhk さんのコメント...
このコメントはブログの管理者によって削除されました。
謎の数学者 さんのコメント...

法学部卒さん。

基本的に大学院出願の時点では研究経験など問われないのが普通です。それよりも、授業でのその学生のパフォーマンスについて書かれている必要があり、ただ「成績がAだった」というだけでなく、より細かく具体的に「どのようなA」だったか、というのが書かれているのが一般てきです。

法学部卒 さんのコメント...

ご回答ありがとうございます。
「どのようなAだったか」というのは、具体的にはどのようなことを指しているのでしょうか。受講者全体の中での順位とか、実際の点数といったことでしょうか。
有効な推薦状を書いてもらうためには、試験を受ける以外に、どのようなパフォーマンスを示すといいのでしょうか。

何度も質問してすみません。名前にも書いた通り、私は法学部卒(現在はフリーター)で、数学の勉強は始めたばかりです。米国の数学科大学院に入るために今から出来ることを積み重ねていきたいのですが、具体的な道筋が分かれば戦略も立てやすいと思い、質問させていただきました。ご回答やブログの情報は貴重な情報源です。いつもありがとうございます。

Stnktshhkというのは私です。間違って送信してしまいました。申し訳ありません。そのコメントは削除していただけたらありがたいです。

謎の数学者 さんのコメント...

法学部卒さん。
基本的にアメリカの大学院には3パターンあります。

1Ph.Dプログラム(日本的な言い方では修士と博士課程の一貫制プログラム)

2Ph.Dプログラムを有する大学にある修士課程のみのプログラム

3Ph.Dプログラムを有さない大学にある修士課程のみのプログラム(基本的に日本人にはほとんど知られていないような大学になります)

大学がいわゆる有名大学になればなるほど、1のみの場合となり、合格も難しくなると思ってください。

そして日本で学部時代に数学を専攻していない場合ですと、とりあえず1に合格するのは現時点では不可能と思ってください。

さらに2の場合でも難しいと思います。

ですが3の場合であれば十分可能です。実際私自身もこのパターンでした。ただ、この場合ですと財政援助は一切得られず、その代わり授業を受け持つことにより給料をもらう、というかたちになりす。

そして、この3の場合でも授業で好成績を修めれば、かなり有名な大学の1のPh.Dプログラムに合格する事が出来ます。実際私もこのような経歴を辿りました。

より具体的な質問があれば、メールをしてくれればありがたいです。


法学部卒 さんのコメント...

お忙しいところ丁寧なアドバイスをいただき、まことにありがとうございます。
先生も別の大学のMAを経由してPhDに入られたのですね。
できればこの経路についても詳しく教えていただければありがたいので、お言葉に甘えてまたメールさせていただきます。

助教@日本 さんのコメント...

はじめまして.とても興味深い内容の記事ですね.

私は1年前に日本で博士をとって,今は日本で物理のある分野の助教をしています.物理とっても数理物理に近いです.
御記事のステップで言うと第3ラウンドまで日本で過ごしているわけです.
私は将来はアメリカでテニュアの研究者になりたいと思っています.
現在の任期が終わったらアメリカのポジションを探そうと思っているのですが,第4ラウンドすなわちテニュアトラックの応募から米国に参戦することは可能だと思いますか?

第4ラウンド(ポスドク)をもう一度アメリカでやり直す必要があるのでしょうか.
はたまた第3ラウンド(博士課程)からやり直さないと行けないのでしょうか.

ちなみに英語に関しては共同研究もしているのでほとんど問題はありません.
しかしTeachingの業績がないので,そこが不安です.

謎の数学者 さんのコメント...

助教@日本さん。
コメントありがとうございます。

物理のことは分かりませんが、数学の場合でしたら、ポスドクまで日本で、Tenure Trackからアメリカというのはほぼ不可能に近いと思います。そこそこの研究実績があったとしてもです。

最大の理由は数学の場合、授業をすることがかなり重要になるからです。実際、私の大学では授業を担当するための条件として、最低でも一年間は北米の大学で学生または教員として在籍した経験が必要になります。

アメリカでTenure Trackの職を得るには、やはり最低でも1〜3年程度、ポスドクとしてTeachingの実績を積むことが不可欠だと思います。

ただ、これは数学の場合であり、物理となるといまいち分かりかねますが。

助教@日本 さんのコメント...

ご回答ありがとうございます.

Teachingの経験は必須なのですね.これは公募にexplicitに書いてあるんでしょうか?それとも暗黙の条件なのでしょうか.
うちの業界だとTenure Trackの公募にTeachingの経験が必須と書かれているのをあまり見たことはありません.

それにしても,これからポスドクとして行くとなるとなかなか大きな決心が求められます.
あまり助教→海外ポスドクという話も聞いたこと無いので.
でも夢なので,いずれ決心したいと思います.

謎の数学者 さんのコメント...

助教@日本さん。
返事が少し遅れました。

数学の場合、teachingの経験は実は暗黙の条件以前の問題です。また、最低でも推薦状のうちの一通はteaching letterといい、その人のteachingに関するものである必要があります。

ただ、これはあくまでの数学の場合であり、物理の場合はどうなのかは分かりませんが。

また、日本の助教というのはアメリカで言うポスドクに相当するのでしょうか?数学であれば、2つ以上の大学でポスドクを渡り歩く場合も普通にあるり。私自身も合計3つの大学で計5年間ポスドクそしました。したがって、アメリカでポスドクをやることは、あまり気にしなくても良いのではないかと思うのですがいかがでしょうか?

ただ、これらはあくまでも数学の場合で、物理となると異なってくることも十分考えられますので、その辺は物理の人に聞いてみるのが良いのではないでしょうか?

助教@日本 さんのコメント...

ご回答ありがとうございます.

確かにそれではTeachingの経験のない人は門前払いですね.
物理の方でどうなっているのか調べてみます.

私は任期付きの助教です.大学によりますが,任期付き助教は実質的にはほぼポスドクと同じです.大学の雑務等が出てくるという点は違いますが.
但し出世コースとしては明らかにポスドクよりは上です.アメリカでいうとポスドクとAssistant Professorの間にもう一つステージがあるという感じでしょうか.

日本助教→アメリカポスドクというコースを聞いたことがないので,実際どうなるのかよくわかりません.
あとは年齢の問題でしょうか.基本的に国内の助教は任期が5年です.この任期が終わると謎の数学者さんがポスドクを終えた年齢とほぼ等しくなるわけです.そこから仮に3年ポスドクをすると30後半です.
一般的にTenure Trackのアプライは何歳くらいまで受け入れてくれるのでしょうか.
40前半まではOKというのだったらいまの任期を務めた後に挑戦できますが,そうでなければ 今のところを早めにやめる必要があるのかなと思っています.

謎の数学者 さんのコメント...

助教@日本さん。

アメリカでは雇用において(アカデミアに限らず)年齢で差別するこが禁じられています。実際、履歴書にも年齢や生年月日は記載しないのが通常です。従って、年齢に関しては心配する必要はありません。

ですが、アカデミアの場合(分野によっては)Ph.Dをとり終わってからの年数というのがある程度重要になってくる場合があります。

数学の場合でしたらPh.Dを取って5年以上たってしまった場合、tenure trackのポジションを見つけるのはかなり難しくなります。

博士号を取ったのが1年前ということなのであれば、今すぐにでもアメリカのポスドクのポジションにアプライしてみてはいかがでしょうか?


助教@日本 さんのコメント...

Ph.D取得から5年後ですか.
この任期が終わってから,なんて悠長なことは言っていられなさそうですね.

今関わっているプロジェクトの進行上,今すぐにアプライということは出来ないのですができるだけ早くアプライしてみようと思います.

ご助言ありがとうございました.
また何かあったら質問させていただきます.

物理学科卒 さんのコメント...

謎の数学者さん初めまして。興味深くブログを拝見いたしました。特にコメント欄で法学部卒さんと具体的なやり取りに興味を惹かれました。
それに関する質問をさせてください。
私は物理学科卒なのですが、そこで履修した物理数学など(数学ではあるが、数学科の数学みたいに厳密ではないもの)の科目や、量子力学や電磁気学など(数学ではないが、授業でたくさん数学を使うもの)の科目でいい成績を収めていれば、推薦状を書く上で、アピールポイントになりますか?

また、やり取りの中で

3Ph.Dプログラムを有さない大学にある修士課程のみのプログラム(基本的に日本人にはほとんど知られていないような大学になります)

という記述があり、このような大学ならば、他学科からでもチャンスがあるということですが、このような大学の情報はどのように入手する事ができますか?

返信頂けたら幸いです。長文失礼しました。

謎の数学者 さんのコメント...

物理学科卒さん。

物理からアメリカの数学科へアプライすることをお考えなのでしょうか?
いずれにしても、推薦状に関してですが、基本的には授業の担当教員が書くのが習わしなのですが、数学科の数学の授業と比べると印象度が落ちるのは否め無いと思います。ただ、日本の大学の場合、他学科履修が制度上かなり困難なため、この辺はどうにもならないところではありますが。

また、Ph.Dプログラムを有さない大学にある修士課程のみのプログラムに関してですが、それほどレベルの高くない州立大学がこれに相当します。私が最初に留学したサンフランシス州立大学などが典型的な例です。情報をどこで入手できるかとのご質問ですが、各大学の数学科のホームページを直接チェックしてみるのが良いと思います。ただこのような大学では財政援助を受けるのが困難な場合もありますので、その点も留意しておいてください。

物理学科卒 さんのコメント...

謎の数学者さん。

丁寧な返信ありがとうございます。
そうです、数学科へのアプライを考えています。

数学科の授業で、位相と離散数学を取ったのですが、成績はA(S,A,B,C,Dの5段階評価で)でした。これは推薦状に書くに値しますかね?

なるほど、州立大学がそのような大学に値するのですね。早速調べて見ます。

また、上記の法学部卒さんとのやりとりの中で、授業を受け持つことで給料を頂き、財政援助を受けられない部分をカバーするとのことでしたが、どれくらいの金銭的負担をカバーすることが出来るのですか?

度々の長文の質問でご迷惑をお掛けします。返信頂けたら幸いです。

謎の数学者 さんのコメント...

物理学科卒さん。

まず、推薦状に何を書くかは書く人が決めることですのでなんとも言えませんが、数学の授業でAをとったならばその担当教員に書いてもらうのが良いと思います。(というか、アメリカではそれが通常です。)

またどの程度の財政援助が受けられるかは、場所によってまちまちですが、多くの場合ホームページなどに記載されていると思いますので調べてみてはいかがでしょうか。

物理学科卒 さんのコメント...

謎の数学者さん。

返信遅れて申し訳ありません。

とりあえず推薦状は数学の担当教員に書いて貰うことにします。

財政援助についてもアドバイス通りに、数学科のホームページを直接チェックしてみたいと思います。

こんな何処の馬の骨とも分からない奴の質問に丁寧に答え頂き、感謝の気持ちでいっぱいです。

また、何か質問する事もあるかもしれません。
その時も相談に乗って頂けたらうれしいです。
ありがとうございました。

謎の数学者 さんのコメント...

物理学科卒さん。

また質問があれば、気楽にしてください。

math_diaspora さんのコメント...

先生のブログを拝見しました強い興味を持ちました。私は、数学を研究上使わざるを得ないのではないかと感じている大学教員です。また、投稿させて頂きたく存じます。

math_diaspora さんのコメント...

数日前に投稿しました者です。私の義理の弟のお兄さんがUCバークレーで博士号を取得し、幾つかの大学で教えたけれどテニュアが取れず、Bank of Americaに転職し、数年過ごした後、NASAに移ることができそこが安住の地となったようです。この人はいまはもう60歳をすぎております。ご参考まで。

謎の数学者 さんのコメント...

math_diasporaさん。
コメントありがとうございます。
私もなんとかテニュアが取れましたが、今振り返ると奇跡的なようにも思っています。

これからも、できるだけブログを更新していけるようにしたいと思います。